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第14回 抗悪性腫瘍薬(イブランス®カプセル)

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抗悪性腫瘍薬2017年12月、抗悪性腫瘍薬のイブランス®カプセル(一般名:パルボシクリブ)が発売されました。適応症は、手術不能又は再発乳がんです。
進行・再発乳がんの5年生存率は約30%と低く、新たな治療薬が望まれていました。イブランス®は、CDK4/6を阻害する世界初の分子標的薬で、2013年4月に米国食品医薬品局(FDA)よりブレークスルー・セラピー(画期的治療薬)の指定を受け、迅速承認された薬です。

細胞周期は、S期(DNA合成)→G2期(準備)→M期(分裂)→G1期(準備)という過程で進行します。Rb(Retinoblastoma:網膜芽細胞腫蛋白質)は、無秩序に増殖しないよう調節するがん抑制遺伝子です。腫瘍細胞では、サイクリン依存性キナーゼ(CDK:Cyclin Dependent Kinase)4及び6とサイクリンDの複合体が過剰活性化され、Rbのリン酸化が促進して無制限に分裂を繰り返すようになります。進行・再発乳がんの約70%はホルモン受容体陽性ですが、サイクリンDの過剰発現によりホルモン抵抗性となっていきます。

イブランス®は、CDK4/6を選択的に阻害して細胞回転を止め、がんの増殖を抑制します。また、併用される内分泌療法は、サイクリンDの過剰発現を抑え、CDK4/6を間接的に阻害するので抗腫瘍効果が増強されます。ホルモン受容体(HR)陽性かつHER2(ヒト上皮増殖因子受容体2型)陰性の進行・再発乳がん患者を対象とした臨床試験で、抗エストロゲン薬(フルベストラント)あるいはアロマターゼ阻害薬(レトロゾール)との併用で、無増悪生存期間(PFS:progression-free survival)を約2倍に延長しました。骨髄抑制による血液系の副作用が高頻度に発現しますが、DNAを損傷する化学療法とは異なり、回復性のある細胞周期停止なので、概ね1週間の休薬で副作用は回復します。

商品名 イブランス®カプセル 25mg / 125mg
一般名 パルボシクリブ
会社 ファイザー(株)
用法・用量 内分泌療法剤との併用において、通常、成人にはパルボシクリブとして1日1回125mgを3週間連続
して食後に経口投与し、その後1週間休薬する。
これを1サイクルとして投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。
*2段階の減量基準あり、ただし75mg未満にはしないこと。
適応 ホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌
相互作用 CYP3A阻害剤(クラリスロマイシンなど↑)、強いCYP3A誘導剤(リファンピシンなど↓)、
CYP3Aの基質となる薬剤(フェンタニルなど↑)
副作用 骨髄抑制(好中球減少、白血球減少、貧血、血小板減少など)
薬価 25mg:5,576.40円 125mg:22,560.30円

※↑:血中濃度が上昇 ↓:血中濃度が低下

使用に際しては、添付文書を必ずお読み下さい。

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連載について

本連載記事(スピンアップ新薬)は、薬剤師の先生方をはじめとした医療従事者や薬学生の方に向け、新薬や医薬品に関する情報や浜田氏ならではの知見など、役に立つ情報を発信していきます。
また、南山堂発行の月刊誌「治療」「薬局」で過去に掲載した浜田氏の連載記事もあわせて公開していきます。

著者プロフィール

浜田康次氏

浜田 康次(はまだ こうじ)氏
日本コミュニティファーマシー協会理事 ほか

日本医科大学多摩永山病院、同千葉北総病院を経て、2017年より現職。著書に「抗菌薬サ−クル図デ−タブック」(じほう)、「ベストセラーで読み解く医療情報ナビ」(南山堂)、「インタビューフォームのAtoZ」(ユート・ブレーン)など多数。『治療』、『Rp.+』、『月刊Nursing』などに連載中。