2016年5月にフィコンパ®(一般名:ペランパネル水和物)、同年8月にビムパット®(一般名:ラコサミド)と2つの抗てんかん薬が発売されました。
日本の抗てんかん薬は、海外に比べ10年のドラッグラグがあるとされてきました。ガバペンチン、トピラマート、ラモトリギン、レベチラセタム、スチリペントール、ルフィナミド、ビガバトリンと相次いで発売され、解消しました。
抗てんかん薬の作用機序は、グルタミン酸系(興奮性)抑制とGABA系(抑制)賦活に大別されます。興奮性抑制として、①興奮に関与する前シナプスの電位依存性Na+及びCa2+チャネルの阻害、②興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の抑制、③シナプス小胞(SV2A)における神経伝達物質の放出抑制、④AMPA受容体を介した過剰興奮の抑制などがあります。抑制系賦活としては、⑤GABA受容体に結合し、抑制に関与するCl–透過性の亢進などがあります。
フィコンパ®は、ゾニサミド以来、27年振りに日本で開発された抗てんかん薬です。後シナプスにあるAMPA受容体を高選択的かつ非競合的に拮抗し、グルタミン酸による神経の過剰興奮を抑制する、新しい作用機序の薬です。部分発作だけでなく、強直間代発作にも適応を取得しました。ファースト・イン・クラスの薬として、既存薬では抑制されない、てんかん発作にも期待されています。現在、小児適応、単剤療法、錠剤以外の新剤形が開発中です。
ビムパット®の適応は部分発作ですが、相互作用や食事の影響がなく、ラモトリギンでみられた重篤な皮膚障害も少ないため、スタンダード薬になる可能性を秘めています。Na+チャネルには、急速な不活性化と緩徐な不活性化があります。従来のNa+チャネル遮断薬(フェニトイン、カルバマゼピン、ラモトリギンなど)は急速不活化ですが、ビムパット®は緩徐不活化と異なる作用機序を持ちます。ブルガダ症候群など、心疾患患者には注意が必要ですが、副作用は用量依存的で慣れもあるようです。2017年8月に単剤療法が承認され、現在、錠剤以外の新剤形が開発中です。
商品名 | フィコンパ®錠 2mg、4mg | ビムパット®錠 50mg、100mg |
一般名 | ペランパネル水和物(PER) | ラコサミド(LCM) |
販売会社 | エーザイ(株) | UCBジャパン(株)/第一三共(株) |
用法・用量 | 1日1回就寝前 週に2mgずつ漸増し、8mgから最大12mgまで |
1日2回 週に100mgずつ漸増し、最大400mgまで |
適応 | 部分発作、強直間代発作、併用療法 | 部分発作、併用療法と単剤療法 |
作用機序 | グルタミン酸受容体の拮抗作用 | Na+チャネルの遮断作用 |
相互作用 | カルバマゼピン、フェニトイン等 | 主要薬との相互作用なし |
副作用 | 浮動性めまい、傾眠、易刺激性・攻撃性 | 浮動性めまい、傾眠、頭痛、嘔吐、悪心、霧視、白血球数減少 |
薬価 | 2mg: 189.70円/4mg: 310.20円 | 50mg: 215.60円/100mg: 352.00円 |
使用に際しては、必ず添付文書をお読み下さい。