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第38回 抗HIV薬(ビクタルビ錠)

 2020/11/02   新薬

抗HIV薬2019年4月、抗HIV(Human Immunodeficiency Virus)薬のビクタルビ配合錠(一般名:ビクテグラビルナトリウム/エムトリシタビン/テノホビル アラフェナミドフマル酸塩)が発売されました。

RNAウイルスであるHIVは、①レセプター(CCR5など)を介して宿主細胞内に侵入、②逆転写酵素によりRNAからDNAに逆転写、③インテグラーゼにより宿主DNAに組み込まれて増殖、④最後に、プロテアーゼで切断されて、出芽します。これらの酵素はすべてHIV自身に由来する酵素なので、阻害しても正常細胞には影響を及ぼしません。抗HIV薬には、核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)、非核酸系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)、プロテアーゼ阻害薬(PI)、インテグラーゼ阻害薬(INSTI)、侵入阻害薬(CCR5受容体拮抗)があります。

HIV感染症に対する治療法は、単独の薬剤で治療すると急速に薬剤耐性を獲得するため、作用点が異なる薬剤を3~4剤組合わせる抗レトロウイルス療法(ART:anti-retroviral therapy)が標準です。抗HIV治療ガイドラインでは、初期のARTとしてHIVを抑制する効果が強力な薬剤〔インテグラーゼ阻害薬、少量のリトナビル、もしくは薬物動態学的増強因子(ブースター)のコビシスタットを併用したプロテアーゼ阻害薬、非核酸系逆転写酵素阻害薬〕から1剤を「キードラッグ」とし、それを補足してウイルス抑制効果を高める核酸系逆転写酵素阻害薬2剤を「バックボーン」と称して併用します。そのほか、長期投与に伴う副作用や医療費の軽減目的で2剤併用療法もあります。

ビクタルビは、ブースターを必要としない新規インテグラーゼ阻害薬のビクテグラビルと、既存の核酸系逆転写酵素阻害薬のエムトリシタビンおよびテノホビル アラフェナミドの配合薬です。食事と関係なく服用でき、錠剤も小さいです。ビクテグラビルおよびテノホビル アラフェナミドはCYP3A、P糖タンパクの基質となるため、これを誘導する作用のある薬剤との相互作用があります。また、1剤で治療が完結するため、ほかの抗HIV薬とは併用できません。

商品名 ビクタルビ配合錠
一般名 ビクテグラビルナトリウム/エムトリシタビン/テノホビル アラフェナミドフマル酸塩
会社 ギリアド・サイエンシズ(株)
適応 HIV-1感染症
用法・用量 通常、成人には1回1錠を1日1回経口投与する
併用禁忌薬 リファンピシン、カルバマゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、ホスフェニトイン、セイヨウオトギリソウ含有食品
副作用 頭痛、下痢、吐き気、めまい、倦怠感など
薬価 1錠7,094.10円

使用に際しては、添付文書を必ずお読み下さい。

※掲載している内容は、現在の情報です

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連載について

本連載記事(スピンアップ新薬)は、薬剤師の先生方をはじめとした医療従事者や薬学生の方に向け、新薬や医薬品に関する情報や浜田氏ならではの知見など、役に立つ情報を発信していきます。
また、南山堂発行の月刊誌「治療」「薬局」で過去に掲載した浜田氏の連載記事もあわせて公開していきます。

著者プロフィール

浜田康次氏

浜田 康次(はまだ こうじ)氏
日本コミュニティファーマシー協会理事 ほか

日本医科大学多摩永山病院、同千葉北総病院を経て、2017年より現職。著書に「抗菌薬サ−クル図デ−タブック」(じほう)、「ベストセラーで読み解く医療情報ナビ」(南山堂)、「インタビューフォームのAtoZ」(ユート・ブレーン)など多数。『治療』、『Rp.+』、『月刊Nursing』などに連載中。