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第40回 新型コロナウイルス感染症治療薬(ベクルリー点滴静注)

 2021/01/05   新薬

SARS-CoV-2による感染症2020年5月7日、抗ウイルス薬のベクルリー点滴静注用(一般名:レムデシビル)が特例承認されました。

米国では、同年5月1日に緊急使用許可(Emergency Use Authorization)、10月22日に正式承認されたので、世界で最初の新型コロナウイルス感染症治療薬になります。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、RNAウイルスであるSARS-CoV-2による感染症です。生物の遺伝情報は、DNA→転写《RNAポリメラーゼ》→mRNA→翻訳《リボソーム》→タンパク質の順に伝達されます。RNAウイルスは、RNA依存性RNAポリメラーゼを使い、DNAではなくRNAを鋳型に1本の長いアミノ酸の鎖を合成し、プロテアーゼで必要なタンパク質を切り出します。

レムデシビルは、ウイルス特有のRNA依存性RNAポリメラーゼを阻害することで、ウイルスの増殖を抑制します。新型インフルエンザ治療薬のアビガン錠(一般名:ファビピラビル)も同様です。元々は、エボラ出血熱の治療薬として開発されました。同じRNAウイルスのエボラウイルスに対する比較試験の結果では、抗体製剤に有意に劣りました。このためレムデシビルをエボラ出血熱治療薬として承認した国はありません。

現時点での有効性、安全性のデータは極めて限られているため、可能な限り全例調査、文書による十分な説明と同意書、販売数量の報告などの承認条件が付きました。原則として、酸素飽和度94%以下、酸素吸入を要するなどの重症患者が対象となります。重大な副作用として、急性腎障害や肝機能障害、インフュージョン・リアクションなどが報告されています。当面、日本への供給量が限定的なため、日本政府が買い上げ、厚生労働省が医療機関へ配分します。

日本救急医学会と日本集中治療医学会は、9月9日に日本版敗血症診療ガイドラインの特別編(COVID-19の薬物療法)を公表しました。そのなかで軽症患者への投与は「推奨」しない、酸素投与/入院加療を必要とする中等症患者、人工呼吸器管理/集中治療を必要とする重症患者については「弱く推奨する」としました。なお、COVID-19に関連するエビデンスは、時々刻々変化しており、常に最新情報を確認する必要があります。

商品名 ベクルリー点滴静注液100mg、同点滴静注用100mg
一般名 レムデシビル
会社 ギリアド・サイエンシズ(株)
本文冒頭 特例承認であり、有効性・安全性情報は極めて限られている
適応 SARS-CoV-2による感染症
用法 【成人、40kg以上の小児】初日に200mg、2日目以降は100mgを1日1回点滴静注
【3.5kg以上40kg未満の小児】初日に5mg/kg、2日目以降は2.5mg/kgを1日1回点滴静注。総投与期間は10日まで
薬価 日本政府が購入し、医療機関や患者の費用負担はない

使用に際しては、添付文書を必ずお読み下さい。

※掲載している内容は、現在の情報です

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連載について

本連載記事(スピンアップ新薬)は、薬剤師の先生方をはじめとした医療従事者や薬学生の方に向け、新薬や医薬品に関する情報や浜田氏ならではの知見など、役に立つ情報を発信していきます。
また、南山堂発行の月刊誌「治療」「薬局」で過去に掲載した浜田氏の連載記事もあわせて公開していきます。

著者プロフィール

浜田康次氏

浜田 康次(はまだ こうじ)氏
日本コミュニティファーマシー協会理事 ほか

日本医科大学多摩永山病院、同千葉北総病院を経て、2017年より現職。著書に「抗菌薬サ−クル図デ−タブック」(じほう)、「ベストセラーで読み解く医療情報ナビ」(南山堂)、「インタビューフォームのAtoZ」(ユート・ブレーン)など多数。『治療』、『Rp.+』、『月刊Nursing』などに連載中。