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第41回 フルオロキノロン系抗菌薬(ラスビック錠)

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喉頭炎急性気管支炎2020年1月、ラスビック錠(一般名:ラスクフロキサシン塩酸塩)が発売されました。グレースビット錠・細粒(一般名:シタフロキサシン水和物)以来、12年振りのフルオロキノロン系抗菌薬(キノロン系薬)の新薬です。

キノロン系薬は、グラム陽性菌(肺炎球菌)からグラム陰性菌(インフルエンザ菌)、非定型病原体(肺炎マイコプラズマ)まで広い抗菌スペクトルを有し、呼吸器から尿路まで全身の感染症に処方されています。反面、汎用に伴う薬剤耐性(AMR)や安全面の課題も懸念されます。今回のラスビック錠は、呼吸器および耳鼻咽喉科感染症に特化したレスピラトリー(呼吸器)キノロンです。キノロン耐性大腸菌が増加している泌尿器科領域の適応はありません。肺組織への移行性が良好で、 in vitro で肺胞上皮被覆液に存在するリン脂質(ホスファチジルセリン)と結合性が高いことが確認されています。

市中肺炎の主な原因菌である肺炎球菌、インフルエンザ菌、肺炎マイコプラズマ、また、近年、呼吸器感染症の原因菌として注目されている口腔内菌、嫌気性菌にも有効です。市中肺炎を対象とした第Ⅲ相二重盲検比較試験ではクラビット錠500mg(一般名:レボフロキサシン水和物)に対しラスビック錠75mgの低用量で非劣性を示しました。ただし、『JAID/JSC 感染症治療ガイドライン』では、キノロン系薬はβラクタム薬が使えない場合の第二選択という位置付けになっています。

キノロン系薬の作用機序は、細菌のDNA複製に必要なDNAジャイレース(DNAをねじるスーパーコイリング)とトポイソメレースIV(DNAを切断するデカテネーション)を阻害します。既存のキノロン系薬は、どちらか片方の酵素活性を強く阻害するのに対し、ラスビック錠は、両方を同程度に阻害するため、最小発育阻止濃度(MIC)の上昇が起こりにくいとされます。多くのキノロン系薬は腎排泄型で、腎機能障害時に用量調節が必要になります。ラスビック錠は、肝・胆汁排泄型なので、腎機能障害時でも用量調節の必要はありません。主にCYP3A4で代謝されるため、CYP3A4を誘導するリファンピシン、フェニトイン、カルバマゼピンなどは併用注意です。主な副作用は、下痢、好酸球数増加などです。直径7.8mm、厚さ3.8mmと小型のため高齢者でも飲みやすい錠剤です。

商品名 ラスビック錠75mg
一般名(略号) ラスクフロキサシン塩酸塩(LSFX)
会社 杏林製薬(株)
適応症 咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、中耳炎、副鼻腔炎
用法・用量 成人には、1回75mgを1日1回経口投与する
禁忌 妊婦、小児、本剤の過敏症
排泄経路 肝・胆汁排泄
薬価 75 mg:353.40円

使用に際しては、添付文書を必ずお読み下さい。

※掲載している内容は、現在の情報です

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連載について

本連載記事(スピンアップ新薬)は、薬剤師の先生方をはじめとした医療従事者や薬学生の方に向け、新薬や医薬品に関する情報や浜田氏ならではの知見など、役に立つ情報を発信していきます。
また、南山堂発行の月刊誌「治療」「薬局」で過去に掲載した浜田氏の連載記事もあわせて公開していきます。

著者プロフィール

浜田康次氏

浜田 康次(はまだ こうじ)氏
日本コミュニティファーマシー協会理事 ほか

日本医科大学多摩永山病院、同千葉北総病院を経て、2017年より現職。著書に「抗菌薬サ−クル図デ−タブック」(じほう)、「ベストセラーで読み解く医療情報ナビ」(南山堂)、「インタビューフォームのAtoZ」(ユート・ブレーン)など多数。『治療』、『Rp.+』、『月刊Nursing』などに連載中。